2024年3月30日
会員著書案内著者名 | 書名 | 出版社 | 出版年 |
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戸田慧 著 | 『ヘミングウェイの五感』 | 松籟社 | 2023 |
【梗概】
プラトンやアリストテレスが感覚を「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の五つに分類し、「視覚」を最上位の感覚と位置付けて以来、西洋文化において視覚は独占的な地位を占めることとなった。20世紀アメリカ文学を代表するアーネスト・ヘミングウェイの文学批評においても、多くの活字がヘミングウェイ作品におけるモダニズム絵画の影響や、映画的手法との共通点など、「視覚」表現に対して費やされてきた。
しかし、ヘミングウェイ作品と「視覚」表現の結びつきが注目される一方で、作中に描かれる「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」の描写については、それを作品解釈の主たる切り口とする研究は数少なく、五感にまつわる表現を包括的に考察する研究もなされてこなかったといえる。
そこで本書ではヘミングウェイの小説における「視覚」のみならず、これまで注目されることの少なかった「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」にまつわる描写を通して初期の代表作『日はまた昇る』から晩年の傑作といわれる『老人と海』まで、主要な長編小説を主軸に総合的に分析することで、登場人物の語られざる物語と秘められた心の内を読み解いていきたい。
【目次】
まえがき
第一章 電気仕掛けのプロメテウス―『日はまた昇る』における「光」
第二章 喧噪と戦争―『日はまた昇る』における「音」
第三章 情熱の受難者たち―『武器よさらば』における「触覚」
第四章 不毛な清潔、豊穣なる不潔―「キリマンジャロの雪」における「匂い」
第五章 死とノスタルジア―『誰がために鐘は鳴る』における「匂い」
第六章 ライオンの食卓―「よいライオンの話」における「味覚」
第七章 カジキの肉、キリストの血―『老人と海』における「味覚」
終章
あとがき
参考文献