2025年3月31日
会員著書案内著者名 | 署名 | 出版社 | 出版年 |
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江頭理江・竹内勝徳・前田譲治(編著) | 『アメリカ文学における終末論的想像力――アメリカ例外主義の展開とその方向性』 | 彩流社 | 2025年 |
【梗概】
アメリカ文学において、世界の終末や終末後の世界を想像し、その物語を紡ぐ営みは長く続けられてきた。起源の一つは言うまでもなく新約聖書のヨハネの黙示録にある。サタンの企みにより荒れ果てたバビロンが神の審判により壊滅する。サタンは攻防の末、火と硫黄の湖に沈められ、最後は新たな国エルサレムが建国され、キリストが再降臨する。
この物語はアメリカという国家の発展と重ねられ、様々な言説を作り上げてきた。この世は惨憺たる状況に堕しており、間違いなく終末に向かっている、最後の審判が下され壊滅するだろう、しかし、必ず救世主が出現してこの国に平和と秩序を与えてくれる、だから信仰を継続し、改善の努力を怠るまい。そういった終末論と国家の発展を組み合わせたレトリックが一八世紀、そして、一九世紀の聖職者や政治家によって多用され、国民を鼓舞してきた。アメリカの文学者たちはこうしたレトリックを利用し、批判し、それを不断に書き換えてきたのである。
本書は終末論の変容や拡張に関する観点を取り入れ、アメリカ文学における幅広い作家と作品を取り扱うものである。本書における終末論的想像力の定義は、キリスト教終末論を基本としながら、戦争、災害、政変、疫病、犯罪、恐慌など、この世の終わりを感じさせるあらゆる出来事に対する作家たちの文学的想像力のことを言うものとする。併せて、本書はアメリカ例外主義の展開やそれに対する批判を文学作品の中に読み取り、終末論と例外主義の関わりについても論じていく。
【目次】
まえがき
特別寄稿
アメリカ大統領と終末論的想像力 巽 孝之
第一部
第一章
「風景」とマニフェスト・デスティニー
――エマソン・超絶主義・領土拡張の欲動について 成田雅彦
第二章
私たちはどう生きるか
――エマソンの「自己信頼」におけるヴァルネラビリティの倫理 生田和也
第三章
独身女性が書く家事手引書
――キャサリン・ビーチャーの『家庭経済論』と『アメリカ女性の家』 秋好礼子
第四章
反時代的考察者としてのヘンリー・アダムズ
――『ヘンリー・アダムズの教育』を中心に 砂川典子
第二部
第五章
絶滅という思想
――一九世紀アメリカにおける環境終末論 高橋 勤
第六章
『大理石の牧神』における絵画と身体
――ナサニエル・ホーソーンの終末論的想像力 川下 剛
第七章
『ハックルベリー・フィンの冒険』とその批評的冒険にみる(非)ヘーゲル的精神の冒険
――マーク・トウェインとアメリカの成長拒否と終末論的想像力 吉津京平
第八章
『船乗りビリー・バッド(インサイド・ナラティブ)』における黙示録的運命 竹内勝徳
第三部
第九章
ポストアポカリプス的想像力とデモクラシーの「未来」
――『オリクスとクレイク』と『沈黙』を中心に 渡邉克昭
第十章
彼らの夢は実現したのか
――トウェインとフィッツジェラルドに見る夢の迷走 江頭理江
第十一章
『怒りの葡萄』の終末描写に見るスタインベックのアメリカ像 前田譲治
第十二章
「丘の上の町」は安住の地か
――「魔法の樽」にみるユダヤ性と普遍性 綱 智子
第十三章
「終わり」のない旅
――スティーヴン・キングのダークタワーの先に 宮内妃奈
あとがき