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2025年1月14日

会員著書案内
著者名 書名 出版社 出版年
編著者:新名桂子、岩下いずみ、田中恵理
著者:伊東栄志郎、河原真也、鈴木英之、
   中尾真理、福岡眞知子、安井誠
『愛と笑いと革命の「ユリシーズ」』 金星堂 2024年

【梗概】
 『愛と笑いと革命の「ユリシーズ」』は、20世紀最大の文学者の一人として知られるジェイムズ・ジョイス(James Joyce, 1882-1941)の代表作『ユリシーズ』(Ulysses, 1922)がこの世に誕生したことを言祝ぎつつ、その誕生の意味を問う研究論集である。『ユリシーズ』の何がすごいのか――この問いを、タイトルの三つのキーワード、「愛」、「笑い」、「革命」の観点から考察した九本の論考が集められている。各論考の概要は以下の通りである。
 田中恵理「モリーの独白における身体表象――『ユリシーズ』出版百年目からみる言葉の軌跡/奇跡」は、最終挿話のモリー・ブルームの独白における身体表象をフェミニズムの観点から再読し、ジョイスが同時代のフェミニズムに連帯していることを明らかにしている。
 伊東栄志郎「これはフィクションです。実在の人物、団体名等とも関係あります。――百二年目の『ユリシーズ』SAY YES」は、『ユリシーズ』は、作家が一番楽しかったダブリンの一日を描きながら、死者を追悼する本でもあるとし、愛と笑いで革命を起こしていると論じる。
 鈴木英之「『ユリシーズ』第十二挿話の集団幻想への笑いと気づき」は、第十二挿話における「市民」という国粋主義者とレオポルド・ブルームとの「国家」をめぐる激論には《所属する危うさ》が笑い飛ばされる仕掛けがあると論じる。
 中尾真理「「物語の構造」と「抒情の技巧」――第十四挿話」は、難解で知られる第十四挿話を物語の構造と抒情の技巧の二つの観点から読み解く。
 岩下いずみ「『ユリシーズ』のユグノー表象に見る移民像――ジョイスが種を蒔いた共同体の未来」は、ユグノー表象に注目し、『ユリシーズ』には現代の最新理論を先取りした形で共同体のユートピア像が描かれていると論じる。
 河原真也「革命前夜の『ユリシーズ』――ジョイスと復活祭蜂起」は、アイルランドの独立を導くことになる1916年の復活祭蜂起がどのように扱われているかについて、歴史的背景を踏まえつつ考察する。
 福岡眞知子「二項対立の弁証法を超えて――第十挿話「さまよう岩々」の複眼空間」は、驚くべき実験的手法で描かれている第十挿話の革命性を綿密に読み解く。
 新名桂子「ジョイスから女たちへ愛をこめて――『ユリシーズ』におけるパロディによる革命と女性讃歌」は、『ユリシーズ』が、19世紀の抑圧的な時代精神を体現した「物語」をパロディの笑いによって壊すことにより革命を起こしているとする。
 安井誠「「新しい女性的男性」としてのブルームの生きづらさ」は、ブルームの生きづらさを男性学の観点から考察し、「新しい女性的男性性」を持つ人物を主人公に仕立てたジョイスがいかに革命的であったかを指摘する。
 このように、本書では、これまでにない新しい観点から、『ユリシーズ』がいかに愛と笑いに満ちた楽しい本であるか、また、どのように革命的ですごいのかということが徹底的に追求されている。

【目次】
まえがき
[論文]
モリーの独白における身体表象
――『ユリシーズ』出版百年目からみる言葉の軌跡/奇跡    田中恵理

これはフィクションです。実在の人物、団体名等とも関係あります。
――百二年目の『ユリシーズ』SAY YES           伊東 栄志郎

『ユリシーズ』第十二挿話の集団幻想への笑いと気づき     鈴木 英之

「物語の構造」と「抒情の技巧」――第十四挿話        中尾 真理

『ユリシーズ』のユグノー表象に見る移民像
――ジョイスが種を蒔いた共同体の未来           岩下 いずみ

革命前夜の『ユリシーズ』――ジョイスと復活祭蜂起     河原 真也

二項対立の弁証法を超えて
――第十挿話「さまよう岩々」の複眼空間          福岡 眞知子

ジョイスから女たちへ愛をこめて
――『ユリシーズ』におけるパロディによる革命と女性讃歌  新名 桂子

[シンポジウム報告]
「新しい女性的男性」としてのブルームの生きづらさ     安井 誠

あとがき
執筆者紹介
索引

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