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2025年4月3日

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著者名 署名 出版社 出版年
尾崎俊介 『ゼロから始める 無敵のレポート・論文術』 講談社現代新書 2025年

【梗概】
 本書は、一義的には、卒業論文を作成する必要に迫られた文系の学部学生を想定読者とする「論文作成マニュアル」である。
 となると、類書は世に多い。それら類書の山を差し置いて、敢えて屋上屋を架すような本を出す意味はあるのかと思われる向きもあるだろう。だが、筆者自身は、意味はあると思っている。なぜなら、既存の論文作成マニュアルは、読み物としてつまらないからだ。
 つまらないと言っても、別にそれらの先行本を低評価しているわけではない。マニュアルというのは、本来、つまらないものなのだ。微に入り細を穿って事細かに書き方を教えてくれる優秀なマニュアル本であればあるほど、退屈なものになるのは当たり前である。
 だから本書が目指したのは、マニュアルとしての優秀さではない。
 本書が目指したのは、アメリカ文化を研究することの面白さ、それ自体を伝えること。そのために、筆者が30年以上にわたって指導してきた中でも飛び切りに面白い卒論を選び出し、それらをできるだけ数多く紹介することに努めた。「『セサミストリート』制作秘話」「アメリカ田園墓地の成立」「『空飛ぶスパゲッティ・モンスター教』とは何か」「バービー人形から見るアメリカ」「バスケットボールの文化学」「ゲーテッド・コミュニティ:アメリカの排他的要塞住宅地」等々、意外な切り口から鮮やかにアメリカ文化の何たるかを明示してみせたこれらの論文例を通じて、まずは文化論自体を「面白い!」と思ってもらうこと――筆者が重視したのはただこの一点である。論文作成のためのノウハウを伝えるのは、その後でいい。音楽教育に譬えるなら、ソルフェージュをやる前にまずはコンサートに連れて行くようなもの、と言えばいいだろうか。その意味で本書は、論文作成マニュアルというよりも、むしろ「アメリカ文化論への誘い」と題した方が良かったかもしれないが、とにかく読み物として抜群に面白い異色の論文マニュアルにはなっているはず。ご一読の上、卒論指導の参考書としてご活用いただければ幸いである。

【目次】
第1章 テーマを選ぶ(その1)
コーヒーブレイク1 論争型論文の例

第2章 テーマを選ぶ(その2)
コーヒーブレイク2 伝記型論文の例

第3章 資料を集める
コーヒーブレイク3 執念の資料集め

第4章 紙に書き出す
コーヒーブレイク4 思わず納得!卒論で耳学問

第5章 笑いを取って、突っ込む
コーヒーブレイク5 笑いが取れる論文

第6章 実際に書き出す
コーヒーブレイク6 突っ込んだ論文

第7章 卒論の構成
コーヒーブレイク7 重なり合う卒論

第8章 卒論「べからず」集
コーヒーブレイク8 これが添削だ!

第9章 注と文献目録を作る
コーヒーブレイク9 脚注の似合う卒論

第10章(補講) アメリカ文学の論じ方
コーヒーブレイク10 新歴史主義的アプローチ

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