2024年10月20日
会員著書案内著者名 | 書名 | 出版社 | 出版年 |
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宮津多美子 | 『異文化コミュニケーション入門—ことばと文化の共感力』 | 勁草書房 | 2024年 |
【梗概】
本書は、国内外の異文化コミュニケーションの実態と、その背後にある文化の特異性や人間の普遍性を深く理解するための知識とスキルを提供し、異文化理解力と多文化共生力を育成します。国際的なキャリアを志向する方々に向けた異文化理解の入門書として、19世紀末から21世紀初頭にかけての異文化コミュニケーションに関する理論や事象、課題を通じて、必要な知識とスキルを身につけることを目指しています。
グローバリゼーションやデジタルトランスフォーメーションが進行する現代において、異なる文化的背景を持つ人々とのコミュニケーションの機会は増加しています。これらのコミュニケーションは、言語的要素と文化的差異が交錯し、言葉と文化のカレイドスコープのように多様な模様を形成します。私たちはその変化する模様から相手の本音を推察し、コミュニケーションの糸を紡いでいきます。この際、相手の出身国や地域の文化的特徴を理解することは重要ですが、知識に囚われすぎると、誤解やトラブルを引き起こす恐れがあります。対人、集団、組織、ビジネスなど、コミュニケーションの各局面で求められるのは、単なる異文化の知識やスキルだけではありません。価値観の違いを超えた相互理解や共感には、普遍的な人間性の理解が不可欠です。
異文化コミュニケーションは、社会学や人類学、言語学、心理学などの既存の学問領域を横断する学際的な分野であり、研究対象は多岐にわたります。本書では、これらの分野における諸問題を網羅的に扱うのではなく、主にコミュニケーションに影響を与える文化的要素に焦点を当て、文化的差異の理解だけでなく人間性の本質を読み解く力を持つコミュニケーターを育成することを目指しています。
【目次】
まえがき
第1章 文化の諸相─日常における異文化─
1.文化の定義
2.コミュニケーションモデル
3.コミュニケーションと文化
4.研究対象としての文化
【コラム】カルチャーマップ
第2章 文化と権力─文化のヒエラルキー─
1.グローバリゼーション
2.社会のマクドナルド化
3.グローカリゼーション
4.想像上の共同体
【コラム】オリエンタリズム
第3章 異文化理解と言語習得─ことばで変わる現実─
1.言語と認識
2.ペンタッド
3.言語習得の臨界期仮説
4.第二言語習得(BICSとCALP)
【コラム】クリティカルシンキング
第4章 言語と文化(1)─多言語・多文化社会における言語─
1.言語と文化の関係
2.多言語・多文化社会
3.バイリンガル教育
4.英語公用語化運動
【コラム】エボニクス論争─言語・方言・標準語─
第5章 言語と文化(2)─言語が生む社会構造─
1.ソシュールの言語学
2.言語帝国主義
3.ピジンとクレオール
4.リンガフランカとしての英語
【コラム】エスペラント語
第6章 非言語コミュニケーション─身体が伝えるメッセージ─
1.非言語によるコミュニケーション
2.表情とジェスチャー
3.パラ言語・ボディランゲージ・近接学
4.視線・接触・外見・人工物
【コラム】沈黙という言語
第7章 文化間の交渉─エスニシティ・ジェンダー・階級が生む障壁─
1.ハイ/ローコンテクスト
2.流行の心理学
3.身体改造(割礼)
4.身体改造(FGM)
【コラム】ポリティカルコレクトネス(PC)
第8章 文化としての時間・空間─仮想現実と監視社会─
1.時間計測の歴史
2.文化における時間感覚
3.単一的時間・多元的時間
4.監視社会
【コラム】ゲーテッドコミュニティ(GC)
第9章 異文化接触(1)─文化の衝突・融合─
1.よそ者(ジンメル)
2.マージナルマンと人種関係サイクル(パーク)
3.カルチャーショック(オバーグ)
4.内なる外国人(クリステヴァ)
【コラム】文化を超える絆─インターマリッジ─
第10章 異文化接触(2)─価値観の強化・変遷─
1.文化の階層
2.カルチュラルスタディーズ
3.ステレオタイプ
4.認知バイアス
【コラム】権力との対話としての世論
第11章 アイデンティティの変容と他者化─イントラパーソナルコミュニケーション─
1.アイデンティティの根源
2.アイデンティティの危機(『夜と霧』)
3.アイデンティティの崩壊(スタンフォード監獄実験)
4.アイデンティティの変容(ストックホルム症候群)
【コラム】アイデンティティポリティクス
第12章 メディアの進化─デジタル社会の光と影─
1.マスメディア
2.ジャーナリズム
3.メディアの暴走
4.フェイクニュース
【コラム】メディア情報リテラシー(MIL)
第13章 コミュニケーションの深化─国境を超えるコンテンツ─
1.通訳・翻訳
2.映画とドキュメンタリー
3.プロテストアート
4.スポーツと文化
【コラム】オリンピズム
第14章 異文化コミュニケーションの未来─文化的仲介者の役割─
1.ソフトパワー
2.社会正義
3.コンフリクトマネジメント
4.許し
【コラム】囚人のジレンマ(ゲーム理論)
終 章 異文化コミュニケーションを学ぶということ
あとがき ことばと文化の共感力─ウェルビーイングを高めるコミュニケーション力─
注
参考文献
図出所
人名索引
事項索引