日本ジョンソン協会第42回大会プログラム

日本ジョンソン協会第42回大会を下記のプログラムで開催いたします。シンポジウムと特別講演があり、充実したプログラムです。奮ってご参加ください。ご不明な点のお問い合わせは、武田将明(masaakitakeda@hotmail.com)もしくは原田範行(nnharada@bd5.so-net.ne.jp)までお願いします。

日時: 2009年 6月 1日(月)
会場: アルカディア市ヶ谷 私学会館 〒102-0073 東京都千代田区九段北4-2-25
TEL: 03-3261-9921(代) https://www.arcadia-jp.org/
*アクセス:市ヶ谷駅(JR総武線、地下鉄有楽町線、南北線、都営新宿線)より徒歩2分(地下鉄の場合は、A1-1出口をご利用ください。)

◆プログラム: ≪受付開始 9:20≫
1. シンポジアム(10:00-12:30)(途中で、コーヒー、ケーキをお出しします。)
「ミス・スペンサーからレディ・ジョージアナ、そしてデヴォンシャー公爵夫人へ―ジョージアナと家族、政治、表象、小説」(詳しくは、シンポジウム要旨をご参照ください。)
司会・講師 向井 秀忠(フェリス女学院大学) 
    講師 一ノ谷 清美(名城大学)
    講師 鈴木 実佳(静岡大学)
    講師 梅垣 千尋(青山女子短期大学)
2.昼食会 (12:30-13:30)
3. 総会  (13:30-14:15)
4.特別講演(14:20-15:30)
 "The British Eighteenth Century and the Pleasures and Challenges of Orientalism"
講演者: Greg Clingham氏(Bucknell大学英文科教授、Bucknell UP理事)
司会: 原田範行(東京女子大学教授)
*当日は、Cambridge UPおよびBucknell UPの書籍展示(割引販売)を行います。
**なおClingham教授は、上記の講演に先立って、名古屋大学、関西18世紀研究会、慶應義塾大学、東北大学などでも講演やセミナーを行います。詳細のお問い合わせは、原田範行までお願いいたします。


≪シンポジウム要旨≫
ミス・スペンサーからレディ・ジョージアナ、そしてデヴォンシャー公爵夫人へ――ジョージアナと家族、政治、表象、小説 (司会 向井秀忠)

 ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』には、ダーシーに対する誤解の解けたエリザベス・ベネットがダービーシャーのペンバリー屋敷を初めて訪れたとき、その見事さに思わず「このペンバリー屋敷の奥さまになったらさぞかしすばらしいだろうな」と感じ入る場面がある。ペンバリー屋敷のモデルとされているのがデヴォンシャー公爵家キャベンディッシュ一族のお屋敷であるチャッツワース。ちょうどエリザベスが訪問した頃、このお屋敷の本当の女主人はジョージアナ(Georgiana, Duchess of Devonshire)という話題性に富んだ女性であった。彼女には、社交界のファッション・リーダーや選挙キャンペーンの有力な活動家でありながら、私生活では賭博、借金、不倫など大きな話題を振りまき続けた。この春、映画『ある公爵夫人の生涯(The Duchess)』がいよいよ日本でも公開されたものの、彼女の本当の魅力についてはまだまだ知られていない。今回は、B・P・シェリダンがレディ・ティーズルとして『悪口学校』にも登場させた、第5代デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナについて、4人のパネリストがさまざまな視点から多角的に紹介していく。

貴族女性のペン――'the spreading Oak' and 'the weak woodbine hanging upon it' (鈴木実佳)
Foremanが描くジョージアナとその母スペンサー伯爵夫人(Margaret Georgiana, Countess Spencer, 1737-1814)の関係は、かなり明確に特徴をもっている。道徳的に正しいと信ずることを勧め、強固な信念をもつことができて、忠告・介入するのが大好きな母親と、善良でありながら、周囲に利用されやすく影響されやすい娘という把握で、これは重要な一面を正しく言い当てているのであろう。しかし、ここでは、記録者とパフォーマーとしての二人に焦点をあて、18世紀末(から19世紀初め)の手紙・日記・文学作品の位置づけや、記録をとるという行為について考察する。

公爵夫人が書いた小説 (向井秀忠)
 まさに波乱万丈な人生を送ったジョージアナは、メアリー・ロビンソンやシャーロット・スミスなど女性作家たちの後援者であったのみならず、自らもEmma (1773) とThe Sylph (1779) という小説を書き、この二つの作品は、若い女性を主人公に、放蕩、アル中、恐喝、家庭内暴力、不義姦通などに充ち溢れる上流階級の世界を描いた実話小説として大いに話題になった。しかしながら、彼女の作品の価値は、単に道徳的に堕落した上流階級の実態を描いたことだけにあるのだろうか。正真正銘のイギリス貴族女性が書いた小説として改めて読み直すとき、リンダ・コリーが「裕福で、権力をもつ、主流派の女性史はどうなっているのか。その点について書かれておらず、ほとんど問題視されることもない」と指摘した点を補うことができるのではないか。今回は、小説家としてのジョージアナについて紹介することで新たな問題を提議したい。

諷刺版画に描かれたデヴォンシャー公爵夫人の選挙活動 (一ノ谷清美)
 新しいDNBは、デヴォンシャー公爵夫人を"political hostess"と紹介している。デヴォンシャー・ハウスは、ホイッグ党の大物政治家たちや皇太子の集う政治的社交の場として有名であった。主として彼女の政治的影響力はこの個人的な空間において発揮されたが、1784年春の総選挙では、ホイッグ党の指導者フォックスを支援して、彼女はウェストミンスター選挙区の街頭に立った。本発表では、デヴォンシャー公爵夫人の選挙活動を描いた、大英博物館所蔵の版画72作品を扱う。版画販売が選挙キャンペーンの一環であったことを考慮に入れて図像の特徴を分類しながら、「デヴォンシャー公爵夫人」のイメージがどのように作られ、利用されたかについて考察する。

ジョージアナと女性の政治参加 (梅垣千尋)
1784年のウェストミンスター選挙区でのジョージアナの活躍は、彼女が女性であるにもかかわらず政治に参加したことで非難の対象となったかのように語られることが多い。しかし近年の女性史研究が明らかにしたように、18世紀後半にはジョージアナだけでなく多くの女性が政治に関心をもち、さまざまな政治活動を行っていた。本報告では、ジョージアナの行動にたいする同時代の女性著述家たちの否定的な言説をいくつか取りあげ、それらが女性の政治参加そのものにたいする批判というよりも、ジョージアナとの政治的立場の違いに由来する反発だったことを明らかにしてみたい。


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