英文学東京若手の会
(2006年3月7日更新)
英文学東京若手の会は2005年1月より過去4回の集会を通じて、
地域の英文学研究者の交流に貢献してきました。
今後は日本英文学会関東支部設立に全面的に協力することとし、
2006年1月14日に支部会設立準備会を立ち上げました。
英文学東京若手の会の趣旨
本会の主な目的は、東京および近県の英文学研究者の相互交流を活発にし、大学院生を含めた若い研究者に研究発表の機会を提供することです。
現在、関東地区には数多くの英文学研究者がいますが、逆にその多さゆえに、時代・ジャンルを横断する交流の場は限られたものでした。そのため同じ英文学を研究しいつでも会える距離にいながら、専門が異なる同業者とはまったく顔を合わせることなく、情報の交換が阻害され研究の幅が狭くなるという状況が続いてきました。また、近年では、イギリス文学、アメリカ文学、英語学といった既存の領域区分を超えた研究や、歴史学や文化研究など他領域にまたがる研究が多く行われ、従来の領域別の学会では発表の機会のない研究者が多数存在します。さらに、大学改革に伴い、若い英文学研究者が従来携わってきた教養課程の英語教育の環境が大いに変化したことから、この変化に対応する新しい教育理論へのニーズも高まっています。
人文系の危機が叫ばれる当今、本会は、今日的な研究・教育状況により柔軟に対応できる活動拠点となることを目指しています。当面は年4回程度の集会をベースに活動を続けていく予定です。
現在活動の中心となっているメンバーの年齢構成の特徴から、ひとまず「若手の会」と名乗ってはおりますが、もちろん本会には年齢制限などありません。皆様の自由なご参加をお待ちしております。
「若手の会」発起人
阿部公彦(東京大) 阿部曜子(津田塾大) 石塚久郎(上智大) 上野直子(獨協大) 遠藤不比人(都立大) 大石和欣(放送大) 大田信良(東京学芸大) 大久保譲(埼玉大) 大野雅子(帝京大) 小田島恒志(早稲田大) 片山亜紀(横浜市立大) 吉川信(和光大) 栩木伸明(早稲田大) 小林宣子(東京大) 斎藤兆史(東京大) 佐藤和哉(日本女子大) 篠崎実(千葉大) 清水知子(山梨大) 末廣幹(専修大) 鈴木聡(東京外語大) 鈴木英明(山脇学園短大) 高橋勇(慶應大) 田尻芳樹(東京大) 伊達直之(青山学院大) 田村斉敏(東京工業大) 中井亜佐子(一橋大) 中野春夫(学習院大) 中村和恵(明治大) 原田範行(杏林大) 藤巻明(立教大) 松本朗(上智大) 松本靖彦(東京理科大) 宮崎かすみ(横浜国立大) 宮本なほ子(東京大) 武藤浩史(慶應大) 村山敏勝(成蹊大) 谷内田浩正(成城大) 山田崇人(成蹊大) 由井哲哉(東京工業大) 吉野亜矢子(早稲田大) 吉原ゆかり(筑波大) 渡辺愛子(早稲田大)
日本英文学会関東支部設立準備会について日本英文学会の関東支部(仮称)設立準備集会を、2006年1月14日(土)に青山学院大学6号館621教室にて、15時30分から行います。本支部は、英文学会として支部組織を整備しなくてはならないという制度的要請と、若手研究者の育成、研究者間の柔軟かつ活発な交流などの内発的な必要の両面から、設立が求められていたものです。従って、本支部の設立に当たっては、英文学会理事会の示唆、助言と同時に、この1年ほど続いてきた「英文学東京若手の会」(以下「若手の会」)の活動実績が参考になると思われます。「若手の会」はこの1年間例会を重ね、その名称に示されているとおり、活動は「英文学」分野にかぎられるものの、これまでになかったジャンル横断的企画や、若き大学院生による新たな視点からの研究発表などを通じ、多くの参加者を得て、少なからぬ成果をおさめてきました。
上記の実績を参考にしつつ、日本英文学会の支部としての設立に際して、いわゆるイギリス文学のみならず、アメリカ文学、英語学、英語教育などの幅広い分野の方々の積極的な参加を求めたいと思います。
今後の手続きとしては、同様に設立準備中の関西支部とも連絡を取りながら、ここでご案内しております「設立準備会」の成果をもとに、英文学会の理事会、評議員会、代表者会議で設立を認めて頂き、正式に発足することになりますが、世代年齢を 問わず、また研究ジャンルを問わず、皆様からアイデアをいただいて新しい支部の活力にしたいと考えておりますので、そうした活動に関心をお持ちの方は、是非「準備会」に足をお運びください。支部規則(案)を含めて、今後支部として活動していく上でのおおまかな運営形態や活動方針をご相談させていただきたいと考えております。当面年1回の大会と年4回程度の例会を考えていますが、他の企画やいっそう頻度の高い活動が可能であるのか、支部の名称をどうするかなど、さまざまな点について自由なディスカッションの場を用意したいと思います。まったくオープンな会ですので、奮ってご参加くださいますようお願いいたします。
また、以下のとおり、準備会の前後にシンポジウム、講演、および研究発表も行う予定になっています。そちらにもご参加いただければ幸いです。
次回集会プログラム
日時:4月22日(土)13:00〜
場所:慶応義塾大学三田キャンパス
*プログラム*
13:00〜
★ シンポジウム 「英語教材としての文学の使い方」 西校舎524室
司会 斎藤兆史(東京大学)
パネリスト 中村哲子(日本医科大学)
坂野由紀子(成蹊大学)
北和丈(東京大学大学院)
16:00〜
★ ワークショップ 「ジーン・リースをどう読むか
−『サルガッソーの広い海』と中期短編を中心に」524室
司会 上野直子(獨協大学)
報告者 片山亜紀(横浜市立大学)
木村政則(日本女子大学非常勤講師)
小林英里(お茶の水女子大学非常勤講師)
丹羽敦子(お茶の水女子大学博士後期課程)
宗内綾子(東京理科大学)
コメンテータ 小野寺健(日本大学)
★ 研究発表 西校舎525A室
「混成のイングランド――マシュー・アーノルドとジャマイカ事件」
発表者 田中裕介(成城大学非常勤講師)
ディスカッサント 富山太佳夫(青山学院大学)
「John Fowles, Daniel Martin における小説の原理―― "ghost" とはなにか」
発表者 近藤康裕(一橋大学大学院)
ディスカッサント 板倉厳一郎(中京大学)
★ プログラム終了後、以下の要領で懇親会を開催します。ふるってご参加ください。
場所:「炭火焼き湯浅」(03-5445-1351)慶應大学からは、慶應振興会通りを篠原医院で左折。会費:一般 5〜6千円 学生 3千円
シンポジウム・ワークショップ・研究発表要旨
★ シンポジウム 「英語教材としての文学の使い方」
英語教育と文学の乖離が過度に進み、両者があたかも全く別の学問分野であるかのような様相を呈している中、文学に対する風当たりはますます強くなっている。だがその一方で、文学が潜在的に持つ英語教材としての有用性を直感的に理解している英語教師は多く、近年ではすぐれた英語教材として文学を見直そうとする気運が徐々に高まりつつある。本発表は、文学教材を効果的に授業で活用する方法を具体的に示しながら、英語教育における文学の使用を(単なる教養主義を超えて)どう正当化できるかを考える。
★ ワークショップ 「ジーン・リースをどう読むか
−『サルガッソーの広い海』と中期短編を中心に」
ジーン・リースは、ポスト植民地主義とフェミニズムの両方の文脈から読まれており、再評価が行われて久しい。しかしスピヴァクの批判にもあるように、手放しで賞賛することはできない側面も抱えている。しかしまた、きわめて独特なその文体からは、スピヴァクの定式化を越えるような要素も伺える。本ワークショップでは、リースのテクストの特性にできるだけ迫りつつ、今日私たちがリースをどのように読むことができるのかを考えたい。
★ 研究発表
「混成のイングランド――マシュー・アーノルドとジャマイカ事件」
田中裕介(成城大学非常勤講師)
マシュー・アーノルドを、「教養」と「国家」に依拠する保守主義者とのみ考えるひとつの誤解は、『文化とアナーキー』(1869)を中心に置いて彼の思想を特定しようとする観点から主に生じると思われる。本発表では、『ケルト文学研究』(1867)を取り上げ、アーノルドの思考が、イングランド(あるいはイギリス)というネイションを捉えるに際して「純粋」と「混成」との間を揺れ動く両義的性格を示していることを浮かび上がらせる。その上でこのテクストが、フェニアン運動だけではなく、ジャマイカ事件との関わりからも読解が可能であることを論証し、アーノルドの単純ではない政治的立場の輪郭を明らかなものとする。その過程においてエドワード・サイード、パーク・ホナン(アーノルドの伝記作者)、富山太佳夫、ロバート・ヤングの所説が批判的に検討されることになる。
「John Fowles, Daniel Martinにおける小説の原理―“ghost”とは何か」
近藤康裕(一橋大学博士課程)
John Fowles(1926-2005)が1977年に上梓したDaniel Martinは、題と同名の主人公が自ら語り手となって自分の過去を語る小説である。少年時代、学生時代、劇作家としての駆け出しの時代、そして現在を、語り手は一人称による語りと三人称による語りの間で揺れながら物語り、異なった時間を行き来する小説へと構成してゆく。映画のシナリオ作家として名を成したこの語り手は、自分の過去を語るうえで、映画的手法には限界があることを指摘しながら小説をその表現手段として択ぶが、実際の語りにおいてはしばしば映画的手法を採る。物語ることについての語り手の態度がこの大部の小説をいっそう複雑なものにしているということができるが、このような複雑さは、語るという行為と小説のつくられ方に、読者の注意を向かわせる。
その意識的に構成された形式は小説に描き出されるテーマと密接に関係しているから、くりかえしあらわれるテーマを検討することによって、章ごとに時代の異なるそれぞれのエピソードをつなぐ「原理」を明らかにすることができると考えられる。発表では、折に触れて語り手の意識にのぼり、小説を支配しているかのように仄めかされている“ghost”に着目する。この小説の中心的な主題とされる“whole sight”を、語り手は複雑な語りをとおして獲得することができたのか、その首尾を問いながら、物語全体に影を落とし、小説の「原理」として多層的な意味を帯びて配されている“ghost”と、重要と思われるエピソードとの関係を辿ることによって、Daniel Martinにおける小説の原理に一考を加える。
研究発表の募集
今後の支部会準備集会(若手の会)で発表をご希望の方は、下記の事務局にお知らせ下さい。 研究発表だけでなく、シンポジウム、ワークショップのご提案なども歓迎しています。
暫定事務局
阿部公彦 QWQ03564アットマークnifty.ne.jp
中井亜佐子 anakaiアットマークgol.com
村山敏勝 toshimアットマークzd5.so-net.ne.jp