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著者名 書名 出版社 出版年
大宮健史 Mark Twain and Europe 大阪教育図書 2015年

【梗概】

 本書は真にアメリカ的と言われるマーク・トウェインにとってのヨーロッパの意義を包括的に論じる。トウェイン自身のヨーロッパにおける体験、ヨーロッパの作家との交友と彼らの作品並びにチャールズ・ダーウィンの著作を通して、トウェインがヨーロッパ文化を吸収し、自作を豊穣にしたことを論証するのが本書の目的である。

 本書は二部構成である。第一部は6章から構成され、トウェインとダーウィンの関係を探求した。第二部は5章から構成され、トウェインとヨーロッパの作家の作品間の影響関係、並びにヨーロッパを舞台とした作品を論じた。

 第一部は、ダーウィンの哲学で扱われた概念のトウェインの作品への影響関係を論じた。トウェインはダーウィンの生物学上の功績について十分認識していて、自作の中でダーウィニズム及びそれに関連するテーマに意欲的に取り組んだ。第一章では、トウェインとダーウィンの会見の模様、トウェインの作品におけるダーウィンの引用を辿った。第二章では、『間抜けウィルソンの悲劇』に見られるダーウィンの人種の概念の影響に焦点を当てた。第三章では、「ハドリバーグを堕落させた男」において、ダーウィニズム的決定論、それから決定論者と見なされるストレンジャーが果すトリックスター的役割、町のモットーの変更に関係する道徳論を論じた。第四章では、それぞれ、決定論、良心、生存闘争をテーマとした三作品、「わが人生の転機」、「コーン・ポーン・オピニオンズ」、「犠牲者」を取り上げ、ダーウィンの学説との関連性を論じた。第五章では、『人間とは何か?』におけるダーウィニズム的決定論、進化論の基礎である人間と下等動物の連続性などに関連するトウェインの動物観、人間観を論じた。第六章では、「細菌の中で三千年」を取り上げ、作品の枠組みにダーウィンの作品が与えた影響、及び作品の執筆メモとトウェインの他の作品の関連性を論じた。

 第二部の第七章では、トウェインとロバート・ルイス・スティーヴンソンの交友関係、そして、ジークムント・フロイトやウィリアム・ジェイムズなどの心理学者たちの影響をトウェインの作品に探り、かつトウェインの人間の深層心理の理解の深化を論じた。第八章では、マッシュー・アーノルドを取り上げ、アーノルドのアメリカ文明批判に対するトウェインの反論が『アメリカの権利要求者』や『アーサー王宮廷のコネティカット・ヤンキー』で試みられたことを論証した。第九章では、トウェインのシェイクスピアに対する高い評価とその読書体験並びに作品への影響関係を探求した。また、『シェイクスピアは死んでいるのか?』で、トウェインがシェイクスピアのアイデンティティの問題に関して自説を変えた心理的背景を決定論に関連して考察した。第十章では、『アーサー王宮廷のコネティカット・ヤンキー』を取り上げ、シカゴ万博開催が近づいた1,880年代、トウェインにとってアメリカのアイデンティティとは何かという問題を探求した。第十一章では、ベイヤード・テイラーやロス・ブラウンの作品が『赤毛布外遊記』に及ぼした影響、先行する作品と差異化を図るためのユーモリストとしてのペルソナ、異国を旅行することで刺激されたトウェインのナショナリズムを論考した。


【目次】

Acknowledgements
Abbreviations
Introduction

Part T Twain’s Relationship to Darwin and His Philosophy
Chapter 1 Mark Twain and Charles Darwin
Chapter 2 The Tragedy of Pudd’nhead Wilson
Chapter 3 “The Man That Corrupted Hadleyburg”
Chapter 4 Mark Twain’s Short Works
Chapter 5 What Is Man?
Chapter 6 Three Thousand Years Among the Microbes

Part U Twain’s Relationship to English Writers and Works Set in Europe
Chapter 7 Robert Louis Stevenson
Chapter 8 Matthew Arnold
Chapter 9 William Shakespeare
Chapter 10 A Connecticut Yankee in King Arthur’s Court
Chapter 11 The Innocents Abroad
Notes
Bibliography

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