会員著書案内
編著者名 書名 出版社 出版年
菊池繁夫・上利政彦 『英語文学テクストの語学的研究法』 九州大学出版会 2016年

【梗概】

 従来、文学テクストは文学系の研究者が論じ、言語学者は自然言語にのみ関心を示してきました。そのためこれまでは、英語文学作品を語学的に論じようとする研究者に向けた網羅的な手引書がありませんでした。本書は、そもそも言語から成り立っている文学作品を言語学・文献学・文体論といった「語学的」見地から論じようとする、若き研究者のための語学的文学論ガイドです。

 外国からの執筆陣としてはGeoffrey Leechランカスター大学名誉教授、Michael Toolanバーミンガム大学教授、Jean Boase-Beierイーストアングリア大学名誉教授という文体論の著名な学者をむかえました。

 内容的には、特に論文執筆に役立つように、優れた論文(書籍化されたものも含みます)の解題に焦点を当てているのが大きな特徴です。第1部「文学テクストを語学的に読むとは」では文学テクスト研究を通時的・共時的視点から概観しています。歴史的にはイギリスも含むヨーロッパで発達してきた文献学がこの語学的文学論に貢献してきました。20世紀半ばからは一部の言語学者が文学論に参加し始めました。第2部「文学テクストを語学的に読む:論文解題」では、英米・日本で書かれた代表的な論文を、日英の研究者がそれぞれ英語と日本語で詳細に紹介することによって、論文執筆の参考に供する形になっています。第3部「文学テクストの語学的研究の試み」では分析のサンプルとして、実際の論文4点を収めています。第4部「歴史辞書を読む」では、語学的文学研究に必要な辞書について、その情報の読み取り方を論じています。特に現代以前の作品を読む時には必須の辞書の紹介がなされています。

 チョーサーやシェイクスピア、ミルトン、ワーズワース、ディケンズ、ジョイス、ヘミングウェイをはじめとする英語文学作品を高いレベルで論じるための指針を示した、革新的な入門書となっています。

【目次】
目次

第1部 文学テクストを語学的に読むとは
 語学的文学論の通時的および共時的広がり  菊池繁夫

第2部 文学テクストを語学的に読む: 論文解題
 イギリスの3人の学者による論文解題について  菊池繁夫
 The best of the bunch: Ten articles on literary stylistics   Geoffrey Leech
 A sample of memorable articles on stylistics and text analysis from the past fifty years:
    A personal selection and commentary  Michael Toolan
 Articles relating to stylistics and translation  Jean Boase-Beier
 日本の論文でテクストを読む  菊池繁夫

第3部 文学テクストの語学的研究の試み
 ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』と2人の歩くキャンドル  菊池繁夫
 詩語の継承と排除 マロリーの用語に関して  上利政彦
 モデルとテクスト 『トテル詩選集』翻訳詩から  上利政彦
 文学テクストの重層性 『失楽園』最終部について  上利政彦

第4部 歴史辞書を読む
 語学研究における辞書の役割 初期の英語辞書を中心にして  和田 章

索 引

トップページに戻る